VAMP!ASH

・・・夜更けの街・・・
石作りの道を雨がぬらす・・音もなく

よく見れば・・・
小さなカフェの戸口に清楚な女性がたたずんでいる
幼さを残すその顔は雨の夜をたのしんでるかのように
紅い傘をクルクルと回しながら・・雨の中で微笑み立つ・・・




・・通りの陰から男がやってくる
屈強な体の大男なのに・・
体を丸め・・・肩を落とし疲れ果てているようだ・・・。

男は彼女をみつけると
その肺から安堵のため息をはきだし
カフェの壁にどっとよりかかった。
その顔は・・・どこか死相さえうかがえる

・・するとその女性の口から言葉がもれた。

大丈夫ですか？
何か大変なことでも？

清楚な顔立ちとそのかわいげな口から漏れた声は
言葉以上に濡れて優しく男の耳に届く

その声と言葉に安心したのか
男はせきを切ったように一気に話し始めた

・・・たいしたことはないんだが
さっきまで向こうの安宿で酒を飲んでたんだ

少し飲み過ぎたとおもったんだが・・
気がつくと目の前に女が一人すわってたんだ
はじめてみる顔だったんだが・・・
これがすごいびじんでな

それに物欲しそうに俺を見つめてるんだよ
確かに美人だったし・・その・・こう
なんて言うか・・甘い香りがしてな。
まわりみえないっていうか・・
女の言うがままに・・
二階の部屋にあがってしまったんよ


いま・・おもえば・・その女
ドアに手をかけずにスゥっと中に入っちまってさ
俺もそのまま中にはいっちまって・・

そしたら・・その女・・
振り向いたとたんに牙をむき出しにして
おそってきやがったんだ！




・・そうさ！
吸血鬼だったんだ！

あれが噂に聞く吸血鬼さ
夜な夜な人を襲い街を徘徊する悪魔みたいな奴らさ

・・・だけど、ほら俺って体も大きいだろ
その辺にあるものを辺り構わず掴んだら銀の燭台だったんだ
それを振り回して、何とか此処までにげてきたんだ・・・。
さすがの吸血鬼も銀の燭台を振り回されたら
太刀打ちもできやしねぇだろ・・・？

そこまで・・話しを聞いていた少女が
クスクスと笑いながら言葉を繋いだ・・・・

まぁ・・それは大変な思いをしたんですね。

・・あら？貴方首筋に血がついてますわ。

男がぎょっとして身をすくめる暇もなく
少女がその首筋に手をのばし・・・・・・
触れる瞬間
当たりに濃厚な甘い香りと霧が舞い始める

あ！・・
言葉を漏らす暇もなく・・霧が晴れたとき

少女はその正体をさらし
男の背後から首筋に犬歯を打ち込んだ・・

人間としての最後の意識の中に
吸血鬼の甘い声が・・溶けてくる。

私から逃げることはできないわ・・・。
絶対にね・・・

男の脳裏に刻みこまれ・・
首筋に打ち込まれた二つの犬歯の痕・・

二度と忘れる事のできない・・
その紋章こそ・・・・

・・・The　thirst:Bloodlines

BAR Vamp!Ash